床暖房工事 8(水漏れ補修)
水漏れで多いのが床暖房マットにフローリング固定用の釘が刺さることが多い、釘と言っても紙を止めるホッチキスの玉と似ている。あれを大きくしたものでエアーガンで打ち込んで固定している。
フローリングは1818mm×303mmの厚みが12mmが一般的で長手方向に片側5mmぐらいの凸出っ張りが有り反対方向に5mm程度の凹みがありそれを1枚ずつ凹の部分に凸を差し込みながら作業を進めて行くようになっている。一般の釘では打つ面が小さいためステップルを使っている、このステップルが基本通り大工さんが打っていてくれるとマットの中にある管に当たる訳がないのだが何故かそれが時々管に刺さっていてそこから水漏れが発生する。
これが水圧検査中に発生して分かれば対処できるのだが上手く管の中心にきれいに刺さっていると水圧検査をパスしてしまうことが多い、試運転も終わり引き渡しても使用者にもわからず2シーズン目くらいに発見されることがある。
なぜかというと推測なのだが管の中を温水が勢いよく流れているうちにステップルに錆が発生しゆっくりと水漏れが出るのではないかと考えられる、実際補修作業でフローリングをはがすと漏れ箇所から錆が発見されたことが多い。マットに行く配管にもこのことがある綺麗に(ちょっと変な言い回しだが)真っ直ぐ一般の釘が刺さっていても同じ現象が起きる。
実際水漏れが起きた場合場所の特定だが、マットか配管しか考えずらくどちらか判別することから始める。マットの場合床下に入り管の行き戻りを切断して接続して熱源機側から水圧検査をしてみる管の中にエアーがあるのでよく抜いてから圧力をかけて見る。ここで漏れが見つかった場合は意外と簡単で何故かほとんどが床下の露出部分でまず漏れることは無い。ここで有った場合は最初に何らかの事情で管の中身だけ交換していたとか自分たちの側に問題があることの方が多いと思われる。
問題はマットの場合でこれは水漏れがあると言う事は分かったがどこにあるかが分からない。マットの下はコンパネ材で上はフローリングで上下隙なしに固定されていて水が出たのは分かるが隙間を縫って床のマットとの貫通部に流れ出てきているだけで見当もつかない。
マットからの水漏れと特定できたから簡単なのはフローリングをはがせば分かるのだがフローリングを貼る時裏側に接着剤を使っているのではがすとマットがバリバリに使い物にならなくなる。この場合建築の施工者側に負担があるのだがおっさん側も出来ればマットの貼り換えはしたくない。マットの材料費ぐらいは施工者側が持つとしても施工代(マットはがし、処分、再度貼り直し)などの経費はほとんどなしで長年の仕事上の付き合いで帳消しになってしまう。悪いのはフローリングを貼った大工さんだと言い切れない。
こちらの説明が足りない場合もある。特に初めて床暖房を経験するような大工さんにはこんな事くらい分かっているだろうと思わないことで。大工さんは良く床鳴りと言う事を気にする、出来上がって歩くと床がキュキュとなる現象で床の下地材との間に少しでも隙間があると鳴く現象でこれは後日分かることが多い、わかった時点でフローリングにビスを打つ、すると隙間が無くなり音が止まるビスの頭は木くずとボンドを詰め後で塗装をかけると傷が全く無くなる。この時ビスを打つとき床暖マットが貼ってあると言う事はすっかり忘れている。マットの管に命中して水漏れが起きる。フローリングの継ぎ目以外に釘やビスを打たないことを伝えなかったことが原因である。
床暖マットの水漏れは厄介である。特に入居後は非常に神経を使う。おっさん側にはあまり責任は無いのだが住んでる人は床暖房やが悪いと決めつけているがいちいち言い訳もできない、補修作業には何人もの職人が入るのでそういう場でしかも施主さんの居る処で不平は言えない。
フローリングの一枚目をはがしてすぐ漏れ箇所が出ればよいがそう上手くはいかない。大工さんも水漏れ補修完了後の仕上げ作業も考えて剥がすのでマットの貼っていない所から剝がさないといけないこともある。又マットはデリケートに出来ているので剥がし途中工具で別の処の管に穴を開けてしまうこともある、慎重に慎重にで進める。とにかく補修作業は大変だ。場所が見つかったときどう補修するかは見えない所に継ぎ手を使うのは禁止事項になっているのでここでは省略する。
一番良い方法は補修と考えずフローリングはその部屋全部剥がしてマットも貼り換えが一番正解。フローリングも一部の貼り換えに成ると一年たつと色あせしていて同じ色は無く張り替えた部分が良く見ると分かってしまう。全貼り換えの場合床と壁の直角になった部分に巾木という60mmくらいのものが全周止めてあるがこれもはがさないといけないしこれは現在接着剤で固定されているのが多いのでクロスも傷がつき一日で終わらない工程に成ることが多いので工務店は最もやりたくない工事と思う。おっさんも同じ思いだが。でも施主さんが一番いやな思いだろうが。 続く。